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アラサーOLの、もがく日記。

ここは退屈迎えに来て

読んでからずいぶん経ってしまいましたが。

ここは退屈迎えに来て (幻冬舎文庫)

ここは退屈迎えに来て (幻冬舎文庫)

 

 

いまはこの、ぼんやりトボけた地方のユルさの、なんとも言えない侘しさや切実な寂しさだけが、すごくすごく、本当に思えた
 
ハマる人にはハマる、ハマらない人には掠りもしない本だろうなぁと思いながら、3~4時間でサラサラと読めました。
わたしは紛れもなくハマる要素満載ですので、じわじわと来るエグさに苦笑いがこぼれました(笑)胸に刺さるのではなく鈍く響くように、淡々と絶妙なリアルが描かれています。
 
わたしの住む田舎にも一応栄えていた中心街があって、駅前には百貨店を含む商業ビルがいくつか並んでいます。
その中のひとつであった若者向けのファッションビルは、いつも若年層の可愛い女の子で溢れ、初売りに長蛇の列が出来、新しいブランドが出来ればイメージモデルが現れたりして、10年程前はこの地域唯一の「華やかさの象徴」でした。まだ10代だったわたしが、アパレルを始めた場所です。
そのファッションビルが、先日潰れました。数年前から衰退の一途をたどり、灰になるようにひっそりと幕を下ろしました。駅前の一等地を陣取っている大きなビルなので、巨大な廃墟と化したそのビルは街全体に漂う寂寥感に拍車をかけています。廃れていく様を日々目にしていたので誰もが特に驚くこともなく、次にその場所に出来るであろう商業施設に早くも憐みの声を上げています。「作ったところで、客なんて入らないよ」と。
10代の終わりを過ごしたそのビルでの思い出は、仕事というにはどこか開放的過ぎて、幼稚で、あまりにもキラキラしています。スタート地点という位置づけが適切なんだろうか。全力疾走!なんて雰囲気の眩しい思い出が、いつの間にかスプレーで下手な落書きをされた廃墟のシャッターの向うに浮かび上がって見えるんです。
 
悲しいとも切ないとも違う、けれど静かに胸が締め付けられるような感覚。それと同じ感覚が、この本を読んでてわいてくるのです。意図的に共感を呼ぶのは難しい、繊細で限定的な内容。レビューで時折酷評があるのも頷けます。
 
私はあなたの運命の輪の一つかもしれない。あるいはあなたがすべきことの扇動者
 
残された者、思い出の中の人、通過点、きっかけをくれた人。1人の人間でも、関わった人数と同じ数の視点で見るとどんな表現にも出来ますよね。人も、時間と同じように流れていきます。きっとわたしも誰かにとっての曖昧な記憶の中にある故郷の一部かも。誰かに背中を押してくれたと感謝されたこともあったけれど、それが何だったのかはもう忘れてしまいました。今わたしはわたし本人の時間軸で、あくせくのろのろ前に進もうと生きていますが、少しアンニュイな雰囲気に足を止めて来た道を振り返ってしまいました。
 
そんな本でした。(終わりはブレずに適当。笑)
 
 
 
書き留めていた記事だったので更新しましたが、この記事のテンション(?)と少し違い、最近良い流れでワクワクを感じることが多い日々です。顔(表情)が変わったね!と言われることがとにかく多いのです。
まずは気持からってね。普通の毎日に、小さな幸せを。それと少しのワクワク感を!